小児整形外科
一般整形外科の対応年齢は、新生児~高齢者までと幅広いです。しかし、より専門性が高い診断を受けたい、治療を受けたいと考えるなら、年齢に合った整形外科を選んだほうが良いでしょう。今回ご紹介する小児整形外科は、新生児~15歳前後の子供を対象とした整形外科で、一般整形外科の診療内容はもちろんのこと、子供特有の病気に対応しています。
特に新生児~就学前の幼児期では、保護者が異変に気付き、早期に治療を開始することが大切です。
それでは、小児整形外科の診療内容や対応可能な症状と病気、小児整形外科の受診がおすすめのケースについてご紹介していきます。

小児整形外科の診療内容
小児整形外科では、各種検査をはじめ、あらゆる診療に対応しています。
それではまず、小児整形外科の診療内容からご紹介していきましょう。
各種検査
一般整形外科と同様に、小児整形外科でもレントゲン検査、CTスキャン、MRIといった検査で異常を調べます。
なお、骨の異常を確認する検査として一般的なのはレントゲン検査ですが、この検査では確認できる内容が限定的なため、より詳細な検査が必要な場合では、CTスキャンまたはMRIが用いられることがあります。
保存療法
保存療法とは、手術をせずにギプスや装具による患部の固定や補強、消炎鎮痛剤での消炎を意味します。
ただし、レントゲン検査などで変形などの異常が認められた場合では保存療法では対応できず、手術が必要になる可能性があります。
手術療法
小児整形外科の手術には、脚延長や側弯症手術、斜頸手術などの種類があります。
なお、手術が必要だと判断できる場合でも、成長過程にある子供の場合ではすぐに手術を行わず、ひとまず保存療法で様子を見ることがあります。
ただし、先天性の疾患で歩行困難などのリスクがある場合ではこの限りではありません。
小児整形外科での治療が可能な症状・病気
整形外科ではあらゆる症状や病気に対応できますが、小児整形外科では子供特有の病気についての対応が可能です。
小児側弯症
小児側弯症とは脊椎が左右に曲がる病気で、原因については先天性もしくは神経の病気がきっかけで発症することが多いといわれています。
また、これらのいずれかに該当しない場合では特発性側弯症と診断されることがあり、その原因については明らかにされていません。
いずれの場合でも、脊椎の異常は歩行などに支障をきたす可能性があるため、装具での矯正または手術で対応する必要があります。
乳児股関節脱臼
乳児性股関節脱臼は先天性股関節脱臼と呼ばれることもある病気で、生後数か月の間に股関節が脱臼した状態です。
この病気は股関節が未発達だったり、もともと股関節が外れやすかったりすることで発症し、特に女の子に多く見られます。
乳児性股関節脱臼は、見た目では気付きにくいことがあり、赤ちゃんの脚の開きが悪い、足を引きずって歩くなどで気付くことが多いといわれています。
なお、乳児性股関節脱臼は装具による矯正で治療を目指しますが、重度の場合では手術での対応となる可能性があります。
先天性内反足
先天性内反足とは、生まれつき足の向きが内側を向いており、まっすぐに治せない状態の病気です。
また、症状が軽度であればまっすぐに近い形に戻すことができますが、重度ではまっすぐに戻そうとしても足首が硬く、動きません。
先天性内反足はギプス固定で改善を目指しますが、重度でギプス固定では改善が難しい場合では、生後6ヶ月~1歳までを目安として手術を行うこともあります。
筋性斜頸
筋性斜頸は先天性の病気で、首の筋肉に柔軟性がないことで、左右にいずれかに首が傾いている状態になります。
この病気を発症すると、同じ方向にしか顔を向けられない、首にしこりができるなどの症状が見られますので、見落とす可能性は低いでしょう。
なお、この病気は寝かせ方に工夫を加えるなどで自然治癒することもありますが、自然治癒の見込みがない場合では、手術での対応となる可能性があります。
大腿骨頭すべり症
大腿骨頭すべり症は思春期などの成長期に発症しやすく、大腿骨頭という骨がずれてしまう病気です。
また、この病気の厄介なところは、初期段階ではレントゲン検査でも確認できないという点にあり、CTスキャンで見つかるケースが多いという点です。
この病気はギプス固定などでは改善できませんので、手術で骨を正常な位置に戻さなくてはなりません。
そして注意しなければ術後に骨頭壊死を起こしやすいということで、それを防ぐためには術後いきなり体重をかけず、リハビリで少しずつ体重をかける練習が必要です。
ペルテス病
ペルテス病は、2歳~14歳頃に発症する股関節の病気で、大腿骨の血流が遮断されて骨が壊死することで発症します。
また、ペルテス病の原因は完全には解明されていませんが、血管の外傷や内分泌異常、血液凝固異常、遺伝などが原因ではないかと推測されています。
ペルテス病は長期的なギプス固定で改善を目指しますが、中等度~重度の症状が見られる場合では、手術での対応となる可能性があります。
骨形成不全症
骨形成不全症は先天性の病気で、生まれつき骨が弱いことから、骨折や骨の変形が起こりやすいという特徴があり、難聴を伴うことがほとんどです。
この病気は20,000人に1人割合で発症する指定難病で、成長ホルモン剤をはじめとする薬物療法を中心とした治療で改善を目指します。
なお、骨形成不全症にはⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型があり、1型は最も軽く自覚症状がないこともあります。
また、Ⅱ型は3タイプの中で最も重く、死に至るリスクが高いとされています。
Ⅲ型も重いですが、死に至るようなことはありません。
骨折後変形
骨折ではギプス固定で治療を行い、通常であればそのまま快方に向かいます。
ところが、何らかの理由によってギプスが外れてしまうなどのトラブルが起こることもあり、この場合では骨折後変形が起こるリスクがあります。
そして骨折後変形が起こってしまった場合では、保存療法もしくは手術での対応となります。
小児整形外科の受診がおすすめの人
小児整形外科では、新生児~15歳までの子供の怪我や病気に対応しています。
そして、幼児期を過ぎた思春期の子供であれば、痛みや変形などの異変に気付いた時点で保護者に訴える、整形外科の受診を希望するなど、何らかのアクションを起こすでしょう。
一方、新生児や乳児期の子供は、どこかが痛いと感じたとしても、それを保護者に上手く伝える術を知りません。
そのため、重大な怪我や病気を見落としてしまう可能性がゼロではないのです。
つまり、いつの間にか症状が悪化してしまうリスクがあるということですね。
しかし、保護者が注意深く子供を見守ることで、重大な病気や怪我は早期発見・早期治療が可能なのです。
以下は子供に見られる異変ですので、いずれかの症状が見られるようなら、ひとまず小児整形外科を受診し、異常の有無を確認しておくことをおすすめします。
- 歩きにくそうにしている、歩き方がおかしい
- 脚が変形している(O脚、X脚)
- 首が左右にいずれかに傾いている
- 左右の脚の長さが極端に違う
- 股関節や太ももを痛がる
- 股関節の開きが極端に悪い
これらが典型的な症状ですので、少しでもおかしいと感じたのなら迷わず小児整形外科を受診し、子供の怪我や病気の早期発見・早期治療を心がけましょう。